●純正律●

中山 健太 筆


1.純正な5度
純正な5度とは長さの比が2:3の弦を振動させて得られる響きであり、とても調和が取れている。
(このことを最初に発見したとされているのがピタゴラス!)
これをセントを用いて表すと、702[¢]である。

5度を12回重ねると、(オクターブの差はあるが)同じ音に戻るのは容易に想像がつくことだろう。
しかし、この純正な5度を12回重ねる(そうして出来上がる循環を五度圏と言う)と、702×12 = 8424[¢]
そこから7オクターブ下げる(1200×7[¢]を減じる)と24[¢]という値(ピタゴラス・コンマ)が出てくる。

すなわち、純正な5度の積み重ねの五度圏は閉じないのである。
この五度圏が閉じないことが、純正律や平均律と言った異なった調律法を生み出した要因なのである。

2.ピタゴラス音律
純正律の説明の前にまずはピタゴラス音律について説明します。
ピタゴラス音律では純正な5度をCを中心として、上方及び下方に積み重ねて音を決めていく方法である。
前述の通り、24[¢]のピタゴラス・コンマを解消しなければならない。
その方法として、この音律では使用頻度の低いCis-Gis間の5度を678[¢]としている。
(この狭い5度を 狼の唸り=ヴォルフトーン と呼ぶ)

しかしながらこの音律では長3度の音程が純正律で386[¢]であるのに対し、408[¢]となっている。
(この差 408-386=24[¢] をシントニックコンマと呼ぶ)
ゆえに、長3度があまり綺麗に聞こえないという欠点がある。

3.純正律
15世紀に入ると純正な長3度(4:5の振動比=386[¢])が用いられるようになり、
それまでのピタゴラス音律では不十分となった。
そこでピタゴラス音律に純正な長3度を取り入れて作られたのが、純正律である。

以下、C調長音階について考える。
まず、トニック(主音)、ドミナント(属音)、サブドミナント(下属音)からの純正5度を考える。
トニックであるCを0[¢]とすると、その純正5度上のドミナントであるGは702[¢]となる。
またトニックの純正5度下のサブドミナントであるFは-702[¢]となるが、
Cから始まる1オクターブ間(0〜1200[¢])に収めるために
1オクターブ上げて(1200[¢]を加算して)498[¢]とする。
(以下オクターブ調整は省略する)
またドミナントの純正5度上の音DはG(=702[¢])に702[¢]を加算し、204[¢]となる。

次に、トニック、ドミナント、サブドミナントからの純正長3度を考える。
Cの純正長3度上のEは0+386=386[¢]
Gの純正長3度上のHは702+386=1088[¢]
Fの純正長3度上のAは498+386=884[¢]
と求めることができた。

これで全ての幹音のセント値が求まった。
では、主音からの比率とセント値を表にまとめてみよう。
  純正律 平均律
音名 比率(X/C) セント値[¢] 比率(X/C) セント値[¢]
1/1 0 2^(0/12) 0
9/8 204 2^(2/12) 200
5/4 386 2^(4/12) 400
4/3 498 2^(5/12) 500
3/2 702 2^(7/12) 700
5/3 884 2^(9/12) 900
15/8 1088 2^(11/12) 1100
2/1 1200 2^(12/12) 1200

お気付きのことと思いますが、純正律では全音にも差が生じます。
すなわち、C-D,F-G,A-H間の204[¢]の大全音と、D-E,G-A間の182[¢]の小全音がある。

4.純正律の発見
ギリシアのアリストクセノスが考案したといわれる音律。
ローマ以降のヨーロッパでは忘れ去られていたが15世紀後半に音楽学者ラミスによって再発見され、
長三度を協和的に用いようとしていたヨーロッパの音律に大きな影響を与えた。

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